家の敷地にはほとんど近寄ったことのない場所がある。それは敷地の端にある古井戸だ。あまりにも異様な雰囲気をだしている地帯であるのと、草がぼうぼう生えているので、なかなか行こうと思っても行けない状況だったからだ。だがこの度庭の掃除をしてこの古井戸の存在がよみがえったのだ。小さい時に一度見た時はそこが見えなくて怖かった。大人になってこの井戸を覗いても底が見えないので本当に怖い。どのくらいの深さだろうと思い、石を落としてみると、何分経ってもそこについた音がしないのだ。なんで?おかしいと思ってちょっと大きめの石を落としてみても、同じく音がしないのだ。これって底なし井戸ってやつなの。その日から毎日のように井戸に行っては石を落としているのだが、一度たりともそこに辿り着いた音を聞いたことがない。この井戸は本当に底なしなのだろうか?そう思うとなぜか底からうめき声が聞こえてくるのは幻聴だろうか。この井戸の謎は深まるばかりである。